看護観とは?
看護観とは一般的にどんな看護師でありたいか、看護師として何を大切に仕事をしていきたいか、患者さんにどのような看護をしてあげたいかという看護に対する考え方です。また、「どういう風に看護しようとしたか」という視点でも看護観を考えることができます。
例えば、優しい看護師でありたい、テキパキ仕事をこなす看護師でありたいなど大まかな理想や看護師に対するイメージも看護観です。患者さんの意思が尊重できるような関わりやアセスメント能力のある看護師でありたい、日々のコミュニケーションを通して信頼関係を築き患者さんのニーズに応じたケアを大切にしたいなど、経験を通して看護観は変化し深まっていくものでもあります。
看護観の必要性
看護師をしていると時間に追われて、もちろん患者さんのために行っていますが、絶対に必要なケアや処置を時間通りにこなしているだけ、業務をしているだけで本当に看護できているのか?と悩む時がありますよね。忙しいだけじゃなくて生死に関わったり急変のリスクが身近にあるストレスや医師・先輩看護師など人間関係のストレスなどで何のために看護師をしているのか?と辛くなることもありますよね。
そんな時に自分の中で看護観を持っていれば、行っているケアや処置、関わりの理由を持つことができ、業務になっているのではないかと悩むことが少なくなり、ブレない軸を持って仕事をすることができるようになります。
看護観の考え方
看護観は看護を通してつくられていくものであって、看護観を先に考えるのは順序が逆のような気もしますが、学校で看護観を考えろだの就職の面接で看護観を小論文で書いてだの何かと看護観を問われることが多いと思うので看護観の考え方を一緒に考えてみましょう。
①自分が病気になった時、どんな看護師にどうしてもらいたいかから考えてみる
例えば私が病気になって入院が必要な状況になったら、将来への不安、頑張ってきたことが全部無駄になるのではないかという絶望感、何故自分が病気にならないといけないのかという怒りやスピリチュアルペインを感じるだろうなと思っています。そしたら私は看護師に、将来への不安に対しては医師から予測される展開を説明してもらえるように調整をしてほしいですし、また、精神的苦痛やスピリチュアルペインに対するケアを行ってもらいたいと思います。
これらのことから、精神的・スピリチュアルケアを行ってQOLが向上できるような介入が重要と考えていることが分かります。これが1つ、看護観と言えますよね。
もう一つ具体例を考えてみましょう。
がんの転移で痛みがあったり呼吸苦や倦怠感など身体的症状が強ければ強いほど早くなんとかしてあげたい、みているのも辛い、変わってあげたいとまで感じるかもしれないですよね。
このように今の状態をアセスメントして適切に症状コントロールを行い安楽に過ごせることが重要と考えていることが分かりますよね。
また、2つの例を総合して「どういう風に看護しようとしたか」という視点で考えると、患者さんのニーズに応じたケアをしようとした=今の状態や性格などをアセスメントし患者さんのニーズに応じた看護を行うという看護観が考えられますよね。
②実習やこれまでの経験から重要であると感じたことから考える
例えば気難しい患者さんだったけど、毎日担当してコミュニケーションをとることで、患者さんの考え方を知り、患者さんの希望に沿った意思決定ができたという経験があったとしましょう。
この経験から、信頼関係を築くことで患者さんの個別性を捉えた関わりを行うことが重要であるという看護観に繋がりそうですよね。
③理想の看護師から考える
救急やICUなど急性期で働くテキパキした看護師に憧れている看護学生さんや新人看護師さんも多いですよね。
それを看護観として表現するなら豊富な知識から的確なアセスメントが緊迫した状況下でも冷静に落ち着いてできる、でしょうか。
看護観を持ったその先の世界
看護観を持って看護をすることで、良い看護ができたとやりがいを感じたり、うまくいくことも多いです。ですがうまくいくことばかりではなく、いろいろな価値観の人が存在しているので、自分にとっては最適でないと思うことを患者さんが望むことがあります。それが例え自分の看護観と反したことでも、一般的な常識から逸脱していたとしても、まず患者さんの言っていることを理解しようと受け入れなければなりません。患者さんの安全が保たれる範囲で意思尊重できるように介入しなければなりません。それが良い看護なのか?看護師が看護を評価するのは目標達成ができたかであり、結果として良い看護だったかは患者さんが判断することであるため分かりません。いっぱい考えて看護観を深め、また次の看護に活かしていくことで看護師として成長していきます。
このように看護観を持って看護することは大切です。ですが、自分の思いを押しつけてしまう原因にもなります。また、看護観を持つことで逆に悩むこともあります。でも、どうでもいいと思いながら看護を行うと、それはケアに反映してしまいます。
看護観を考え深めていくことで最初は看護師としての成長に繋がります。しかし、看護観を持ち深めたその先の世界では、もはや看護観は必要ないという看護観になるのではないかと私は想像しています。